外に出かけても、横を誰かが通り過ぎる時、コンビニで買い物をする時、電車で近くに人が座った時、びくびくしてしまうのがこの症状です。いつか慣れる筈、と放置していると、もっと重大な心の病気になってしまいます。克服するために大切な5つの約束を確認してみませんか?

人が怖いという症状

どんな状態が「人が怖い」症状なのか

一言に「人が怖い」と言っても、自分の症状が本当に問題があるのかは分かりにくい物です。まずは、どんな時にそう思うかを考えてみましょう。
今から書く設問に、YesかNoで答えてみてください。

  • 隣を人がすれ違うと、嫌な気持ちになってしまう
  • レジで会計をする時は緊張する
  • 電車に乗っていて、近くに人がくるとつらい
  • 友人や知人であっても、目を合わせる事が苦痛である
  • 人と話をすることが苦手と感じている
  • 外出しなければいけないと思うとストレスを感じる

どのくらいYesの数はありましたか?
実は、この設問に対して1つでもYesと答えた方は「人が怖い」症状に悩まされている状態といえます。症状が悪化する前に、まずは自分の心に起こっている事を知っていきましょう。

対人恐怖症という心の病気

対人恐怖症とは?

対人恐怖症という心の病気があることはご存知でしたか?
書いて字のごとく、この症状の特徴は「人が怖い」というものです。

あがり症とも呼ばれる神経症の一種である。
他人の前での失敗経験などをきっかけに、人前で症状が出ることを極度に恐れ、他者の目の前で極度の緊張にさいなまれる。

思春期にはよく見られ、軽いものは自然に治ってしまうものであるが、一方で社会的生活に支障をきたすほど対人不安が高まってしまう場合、神経症として治療が必要である。

この対人恐怖感は、社会で生きていく上で非常に難儀な問題です。
大勢の前で発表をしなければいけなかったり、上司に報告が必要な時など、仕事をしているとどうしてもこういった「人対人」の状況にさしかかります。

買い物に行くだけでも、会計の際には人とコミュニケーションをとる必要がありますよね。生きていくには人と接していかなければいけないのですが、対人恐怖症の方は、このどれにも苦痛を感じてしまうのです。

これでは生活をしているだけでストレスが溜まってしまいます。

こんな症状も対人恐怖症

対人恐怖症には様々な症状があります。
人と話すのが怖いだけでなく、これらの症状の自覚があるという場合は、対人恐怖症であることが多いと言われています。

赤面症(赤面恐怖症) – 人前で顔が赤くなっているのではないかと思ってしまう。
視線恐怖症 – 他人あるいは自分の視線を気にしてしまう。
醜形恐怖症 – 自分の顔だちや体が醜いと思い込み、うまく対人関係を築けない。

嫌疑恐怖症 – 周囲から自分が犯人だと疑われているのではないかと思ってしまう。
電話恐怖症 – 電話する時、周囲の人から聞き耳をたてられているように感じ、うまく話せない。
失語恐怖症 – 自分の言葉で相手を傷つけてしまっているのではないかと思い、自然に話せない。

雑談恐怖症 – 自分は会話が下手な人間だと思い込み、自然な会話が出来なくなる。
吃音症 – 人前でどもってしまう。
体臭、口臭恐怖症(自臭症) – 自分の体臭がきつくて人から嫌われてしまっているのではないかと思う。

これらの症状を恐れるあまり、更に症状が悪化してしまうという悪循環が対人恐怖症の症状です。この症状を意識しない状態、つまり「人と接してない」状態の時にはこれらの症状は現れません。
ここに対人恐怖症を克服する鍵があります。

絶対にやってはいけないこと

対人恐怖症を克服しようとする時に、絶対にやってほしくないことが2つあります。この2つをしてしまうと、逆に症状が悪化してしまうので、注意してください。

外出を避けて人に会わないようにする

確かに、恐怖の原因となる「人」を避ければ怖くはありません。
とはいえ、完全に一人で生きていく事は不可能です。
この方法をとってしまうと、数少ない外出を更に意識するようになり、その日を考えるだけで憂鬱になり、最悪の場合はうつ病を併発してしまう恐れがあります。

さらに、めったに人とあわないせいで、今までは怖くなかった相手までもが恐怖の対象となってしまうこともあるのです。

いっその事人といっぱい会うようにする

これは、やり方によるのですが、多くの場合失敗してしまい症状を悪化させてしまいます。
慣れてしまえば怖くなくなるかもしれない、と思うかもしれませんがそれは違います。
対人恐怖症といのは一種のトラウマを抱えた状態であり、それを克服するためには時間が必要です。

そこに無理をしてまで人と会う機会を作っていくと、脳が麻痺していきます。
恐怖感は確かにわきませんが、そのかわりにあらゆる仕事や作業に集中できません。
また、感情の起伏が激しくなったり、逆に一切なくなったりと、更に症状が悪化してしまいます。

この状態になってしまうと、治療は困難になってしまうので注意が必要です。

克服するための5つの約束

1つめの約束「落ち着く癖」

対人恐怖症を克服するために、まず最初の約束は「落ち着く癖」です。

人が怖いと思う時を思い返してみてください。緊張していたり、体が震えていたり、異様に汗をかいていたりと、落ち着いてはいませんよね。人と対峙している時に落ち着く事ができれば、対人恐怖症はよくなっていきます。

そこでこの約束が重要になってくるのです。落ち着く癖を何か作ってみましょう。最初は気を紛らわせるような事で構いません。

人と話をする時に親指をいじってみたり、足を動かすなど、自分なりの落ち着く癖を作ってみましょう。それを合図にリラックスができるようになり、人と話している最中でも気が楽になります。

2つめの約束「おまじない」

おまじないなんかで治るはずがないと思っていませんか?
そんな事はありません、大事なのはおまじないを信じるという気持ちです。

対人恐怖症は心の症状です。心が落ち着く方法さえ見つければ、克服する糸口となります。おまじないはその1つなのです。

出かける前に何かをする習慣をつけましょう。靴の紐を特別なものに変えてみたり、自分の誕生石のついた指輪をつけてみたりするといいですね。これをしていればいいことがある、と思ってみると、気持ちが少し軽くなりますよ。

3つめの約束「神社に行く」

神社に行って、お願いをしてみましょう。
お参りをして、自分の対人恐怖症を治したいとお願いをすることによって、治療への意思が固まります。自分の悩みや困り事を自覚して、改善したいと願うということは、それだけで治療へと繋がるのです。

また、神社でお願いをした、という事が心の拠り所にもなります。お守りを買って持ち歩くのもいいですし、絵馬に健康祈願を書くのもいいでしょう。

4つめの約束「ご褒美制度」

自分が苦手な事をした後に、何かご褒美を設定してください。例えば仕事でプレゼンテーションを行わなければいけなくなった場合、その日の夜に美味しいものを食べるだとか、好きなものを買ってもいいということにします。

こうして「人と話すといいことがおこる」という紐付けをしていくのです。ネガティブな出来事のあとに、必ずポジティブなことがおこるという決まり事ができると、人間はそのネガティブをそこまで嫌だと感じなくなります。

5つめの約束「誰かに打ち明ける」

これは最も重要な事です。
打ち明ける相手はなるべく自分が話していて苦になりにくい相手が好ましいでしょう。家族、恋人、友人、上司、部下、誰でも構いませんが、なるべく自分に親身になってくれそうな相手がベストです。

冗談めかしていうと、本気ととらえてもらえず深刻な問題ではないと思われてしまって話になりません。大事なのは、真剣にそのことを伝えることです。自分がいかに対人関係で苦労しているかを話し、それを誰かが聞いてくれるという体験は、心の傷を癒やす一助となります。

もし周囲に適当な人がいない場合は、心療内科へ足を運ぶのも一つの手でしょう。心のプロフェッショナルがあなたの話を親身に聞き、問題解決を全力でサポートしてくれますよ。

対人恐怖症は日本人特有の病気?

驚くべきことに、対人恐怖症は海外では周知されていません。あがり症や個々の症状を紐付けた別の病名はあるのですが、対人恐怖症という病名では広まっていないのです。

海外での呼称はTaijin kyofusho, also taijin kyofusho symptoms、通称「TKS」と呼ばれているそうです。

アメリカ精神医学会の診断マニュアル『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版(DSM-IV)に、対人恐怖症が日本における特異的な恐怖症として挙げられている。
DSM-IVの「付録I 文化に結びついた症候群の文化的定式化と用語集の概説」に記されている。

taijin kyofusho 対人恐怖症

日本における文化特異的な恐怖症であり、DSM-IVの社会恐怖とある意味で類似している。
この症候群は、その人物の身体、その一部またはその機能が、外見、臭い、表情、しぐさなどによって、他の人を不快にさせ、当惑させ攻撃的になるという強い恐怖のことである。
この症候群は、公的な日本の精神疾患の診断システムに取り入れられている。

日本人は他者を思いやりなさい、と子供の頃から教えこまれています。その結果、こういった考えになりやすくなり、対人恐怖症になりやすい土壌ができているのでしょう。

もし自分が対人恐怖症なのかもしれないと思っても、それを恥ずかしく思う必要はありません。なぜなら、日本人の誰もが最初からこの症状を発症しやすいのですから。

人見知りと対人恐怖症の違い

人見知りとは?

見知らぬ人や、久しぶりに会う人と会話をするのが苦手という経験は誰しもあるものです。人間は、子ども時代に人見知りをしやすくできています。これにはちゃんとした理由があります。

人見知りとは生物の本能です。例えば、野良猫に親しげに近寄っていって、いきなりおなかを撫でる事に成功する確率は極めて低いですよね。

彼らは見知らぬ人が近づくと逃げてしまいます。

これは外敵から身を守る為の重要なメカニズムなのですが、これを人間が行うと「人見知り」と呼ばれます。
そう、人見知りは生物の本能的行動だったのです。

子どもというものは大人よりも経験が少なく、より直感で動きやすい状態にあります。結果として、本能的に動きやすくなり人見知りもしやすくなるのですね。

人見知りと対人恐怖症の違い

さて、人見知りも対人恐怖症も同じものではないかと思われがちですが、実は大きな違いがあります。
とはいえ、人見知りから対人恐怖症へと変わってしまう事もあるので、まずは何が違うのかを見ていきましょう。

上記で述べたとおり、人見知りとは本能的な行動です。
対して、対人恐怖症は経験から起こる症状です。

人見知りは経験に基づかない本能的な行動なので、ある程度相手と親しくなれば恐怖心を抱かなくなり親しく話すことが可能となります。
ところが、対人恐怖症は過去のトラウマが原因で起こっている症状のため、相手と親しくなる事事態が非常に困難です。
更に、親しくなった後も恐怖心を抱く事があります。

これが2つの違いなのです。

さて、ではどうして人見知りが対人恐怖症へとかわってしまうことがあるのでしょうか?
それはやはり「経験」が問題となってきます。

人見知りの状態で他者と会話をして、楽しい時間を過ごせることはまれです。
このような体験を何度も積み重ねていくうちに、その出来事事態がトラウマとなり対人恐怖症になってしまうことがあるのです。

対人恐怖症と間違われやすい症状

対人恐怖症の症状と似ていながらも、核となる原因が違うのがこの「回避性パーソナリティ障害」です。この症状の特徴は「他者からの否定的な意見への過敏さ」「自分への評価の低さ」があげられます。

どうせ自分なんて大したことのない人間だ、だから誰からも好かれない、それなら人付き合いなんてする必要がない、というのがこの状態の患者の意見です。対人恐怖症の人とは別のベクトルであるということがわかりますね。

さて、問題なのがこの症状は対人恐怖症の終着点になることがあるという点です。
長い間対人関係で苦しんできた人は、なぜ自分は人と仲良くできないのかを考えます。
そして行き当たるのが「自分は魅力的ではないからではないか」という思い込みです。

魅力的になろうと考えても、その先にあるコミュニケーションを考えると症状が怖くなり一歩が踏み出せません。

そうして行き着くのがこの回避性パーソナリティ障害なのです。喋る事ができないのであれば、最初からそういった場を避けるようにすれば問題はおこりません。

とはいっても、この状態にまで精神状態が悪化していくと、あらゆる行動に不安や苦痛がつきまとうようになります。日常生活を送るだけでストレスがたまるようになってしまうので、そうなる前に問題を解決する必要があります。

心療内科へ行くという方法

もう自分ではどうしようもないと思った時、頼ることができるのが心療内科です。心についてのプロフェッショナルが揃っているので、あなたの症状をいえばすぐにそれが対人恐怖症であると判断するでしょう。

あまりに重度の場合は精神的苦痛を和らげるために、睡眠導入剤などの薬を処方してくれる場合もあります。睡眠障害を併発している場合などは、こういった投薬治療が極めて有効です。

また、定期的にカウンセリングを受けることで、人と話す自信もついていきます。どうにかして治したいと強く思う場合には、通院するという手段もあるのだということは頭に入れておいてください。

まとめ

対人恐怖症はとてもつらいものです。一度この症状を自覚すると、早く治そうと躍起になり逆に症状を悪化させてしまうこともあります。大切なのは、治そうという気持ちもそうですが、焦らないということです。

この症状はトラウマや過去の失敗が原因であり、その失敗を強く意識すればするほど問題が起こりやすくなってしまうからです。5つの約束を忘れずに実行して、まずは少しずつできることを増やしていきましょう。

そして、あなたはあなたが思うよりもずっと素敵な人間です。
自分はだめだと思い込まず、どうしてだめなのかをまず考えます。
その部分が短所なのであれば、その裏返しがあなたの長所となりえます。

ネガティブな部分ばかりみずに、ポジティブな部分をみるように心がけましょう。
そうするだけで、対人恐怖症はぐんと和らぎやすくなります。

対人恐怖症は治療可能な症状です。焦る必要はありませんが、ゆっくりと着実に克服をして、実生活を幸せに過ごせるようにしていきましょう。