被害妄想は病気?原因と対処法を知ればこころが軽くなる

「周囲の人に嫌われている?」「誰かに監視されている?」「恋人に浮気されている?」そんな不安な気持ちを隠しきれなくなったことはありませんか?友人に相談してみたら「それって被害妄想なんじゃないの?」と言われてしまった、自分でも被害妄想が強いと感じてしまっている。そんな人へ、こころが軽くなる処方箋、出しておきますね。

被害妄想とは?

被害妄想とは「実際に被害を受けていない」にも関わらず自分が「実際に被害を受けている」と思い込んでいる状態や、実際に何かしらの被害を受け、決定的な証拠もないにもかかわらず犯人を決めつけてしまうような状態のことを指します。

例えばテレビでストーカー被害のニュースを見て「盗聴器が仕掛けられていたらどうしよう」と不安になることがあります。最初は、「そんなわけないか。考えすぎだよね」と思っても、その疑いや不安が抑えられなくなってくると、なんとなく周りの様子がいつもとおかしく感じられたり、本当に仕掛けられてなかったとしても、「盗聴器が仕掛けられている!」と確信してしまうようになってしまいます。

このように感じることがあなたにもあるかもしれません。そういう時「これって被害妄想なのかな?」と不安になってしまうこともあります。ですので、被害妄想とはどういう状態なのかをきちんと把握するために、今一度「被害妄想の定義」から見つめ直していきましょう。
被害妄想は大きく分けて「病気の症状である場合」と「精神的な不安定さから来る思い込み」の2種類があるそうです。病気の症状なのか、そうではないのか、この二つを分ける違いは、その思い込みが「揺るぎない確信」なのか「ちょっとした思い込み」なのかの違いです。

そもそも「妄想」とは「非合理的かつ訂正不能な強固な確信」と定義されています。どんなに周囲が「それは違うよ」と説得や説明を重ねても一向に考えが変わらない、確固たる確信があると本人が感じている場合を妄想と言うそうです。

逆に本人に確信があっても、周りが「そんなことないよ」と説得した結果、「自分の勘違いかもしれない」と考えを修正できるようであれば、それは妄想ではなく、ちょっとした思い込みだったということです。

つまり被害妄想とは、自分が「本当はその事実はないのにもかかわらず、他者から悪意を持って危害を加えられている」と確信している状態と言えます。

【そうだったのか】よくわかる被害妄想の思考回路

被害妄想は一見、現実離れしたような印象を受けますが、本人の中ではきちんと辻褄があっているのです。どうして現実離れしたような確信が生まれてしまうのでしょうか?

脳が強いストレスを感じたり、不安に感じることが多くなると、それに対して「なんとかなるさ」「大丈夫だろう」という柔軟な考えができなくなります。そのため、起きてることの整理がうまくできなくなってしまい、一度これだと思いこんだことを訂正することが難しくなります。

私たちの脳は、人の声や騒音、人の表情や雰囲気など、眼に映るもの、耳から聞こえるものなどの膨大な情報の中から、自分にとって必要なものだけを取り入れるようにできています。

ですが脳の働きがうまくいかなくなっている状態ではその情報の取捨選択がうまくできず、普段気にも留めないような情報にまで気付くようになってしまいます。次々入る膨大な情報を処理しきれずに、ある種パンク状態になっていると言えます。

この時その人はその人なりに「なぜ自分は不安に感じているのか」を整理しようと一所懸命になっているので、とにかくその「なんだかよくわからない不安の原因」を探そうとします。ですが、この時脳は混乱状態にあるため、情報を正しく組み合わせて考えることができず、現実にそったストーリーをうまく組み立てることができません。

その結果、「みんなが私のを悪口を言っている(だからこんなに不安に感じるんだ)」(関係妄想)、「きっと部屋に監視カメラが仕掛けられているんだ(だからこんなに不安に感じるんだ)」(注察妄想)、「あの人は浮気しているにちがいない(だからこんなに不安に感じるんだ)」(嫉妬妄想)など、現実とはかけ離れたストーリーをこじつけて、「だからこんなに不安に感じているんだ」と脳を説得させようという心理が働いてしまうのです。

これが被害妄想が起こる仕組みです。

繰り返しになりますが、これが病気の場合は「そうか、私の勘違いだったのか」という軌道修正が効きません。当然、他の人からの指摘や説得も、素直に聞き入れることをしません。

被害妄想は病気?病気じゃない?

病気である場合もあるし、そうでない場合もあります。

病気の症状として被害妄想が出ている人は、「被害妄想なのかな?」とすら思うこともなく、それを既に「実際に起こっている事実」だと確信しています。

ですから、例えば誰かに被害妄想なんじゃないの?と言われたとして、「私って被害妄想なのかな?」と不安に思っていたとしたら、それは病気によるものではなく、精神的な不安定さが原因です。病気ではありませんので安心してくださいね。確信でない時点で「妄想」とは呼べないからです。

被害妄想が病気の症状であるのか、精神的な不安定さによるものなのかの明確な境界はありませんが、逆に周囲からの説得にもかかわらず、その思い込みが微塵たりとも揺るがない場合は、病気であると認識したほうがよさそうです。

被害妄想7つのチェックリスト

被害妄想と一口にいってもいろいろな種類があります。自分の中に思い当たる節があるか、チェックしてみてください。病気であるかどうかに関わらず、当てはまるようでしたら「精神的に不安定なんだな」と認識するためのヒントにもなります。

もし周りの人でこのような態度をとっている人がいたら、本人が病気だと思っていないくても、病気の可能性があると理解してコミュニケーションをとることが大事です。自分の場合でも、自分以外の誰かである場合でも、そのメンタリティーを理解するきっかけになると思います。

【関係妄想】:見知らぬ人の会話や遠い国で起こった事件など、実際には自分と全く関係の無い事を自分に関係がある事だと確信する事を関係妄想と言います。「ヒソヒソ話が自分の内容であるに違いない」「ニュースキャスターが今笑ったのは私のことだ」など、他人からすると「それは考えすぎでしょ!」と思えることでも、本人とってはそうとしか思えないのです。

【注察妄想】:「誰かにじっと見られている」「監視されているかもしれない」という妄想です。現実に存在する人間が対象となるだけでなく、誰もいなくてもそのような視線を感じるということもあります。      

【追跡妄想】:「自分は組織に追われているんだ」などの、誰かに追跡されているという妄想です。警察に尾行されているとか、暴力団に追われている等があります。ゲームのやり過ぎ、漫画の見過ぎ、などと安易に判断しないように注意が必要です。

【被毒妄想】:食べ物に毒が入っているという妄想です。「病院で出される食事や薬に毒が盛られている」と思い込み、受け付けないなどの例が目立ちます。

【嫉妬妄想】:配偶者や恋人が、「浮気している」「性的関係を持っている」と信じる妄想です。統合失調症や、認知症、それ以外では、パラノイアなどの人格障害で顕著に見られます。

【好訴妄想】:客観的に見れば、不利益を被っていないのに、特に法的な権利を侵害されたと信じる妄想です。単なる被害妄想とは違い、自分の権利を主張して、時には法的な手段に訴えることが特徴です。

【被支配妄想】:自分の思考、感情、行動などが誰かに支配され、操られているという妄想。統合失調症に多く見られる妄想で、この妄想による体験をさせられ体験といいます。

被害妄想をしていたら疑うべき4つの病気

上記のチェックリストを見ると、「あ、あの人ってもしかして」と思ったり、「自分もこれに近いことを考えたことがある」と感じたりする部分はありませんでしたか?

だからと言って、すぐに病気だと決めつける必要はありませんが、「精神的に疲れていたのかも」という可能性を考えられるようになると、自分に対しても、周囲の人のに対しても接し方が変わってきます。

実際に重度の被害妄想が出ている場合、つまり「確信が揺るがない」場合は病気の可能性もあると考えたほうが良いでしょう。実際にはどんな病気が被害妄想を発症するのでしょうか?

統合失調症

統合失調症では、被害妄想がよく見られます。誰かに見張られている、尾行されている、盗聴されている、自分の噂をされている、自分のことが放送されているといった内容のものです。

天皇の子孫である、イエス・キリストの再来である、発明王であるといった誇大的な妄想もあります。脳が腐っている、癌になっている、腸がとけているなどという身体に関する妄想もみられます。

うつ病

うつ症状が進んでいくにつれて、「被害妄想」 や「被害念慮」とよばれる症状が目立つようになる傾向があります。周囲から自分が責められている感じ、しいたげられているような気持ちを抱くようになるのです。

被害妄想が強くなると同時にどんどん言葉数が少なくなっていき、家族との会話もままならなくなります。職場では、誰とも話さず、孤立するようになってしまうでしょう。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

戦闘を体験した退役軍人や性的暴行や暴力の被害者などに起こる、心に受けた衝撃的な傷、急激なストレスがトラウマ(心的外傷)になって生じてくる様々なストレス障害のことです。

心的外傷後ストレス障害では、トラウマ体験が意に反して繰り返し記憶によみがえるので、鋭利なものを見ただけで「刺される」と感じてしまったり、暴力シーンなどを見ると「自分が狙われている」という被害妄想を生む可能性があります。

認知症

認知症の人の妄想の出現頻度は、比較的高く、東京都の調査によると認知症の人の約15%に妄想が見られ、またアルツハイマー型認知症の15~56%に、脳血管性認知症の27~60%に見られるとの報告もあります。

この妄想の特徴は、被害的な内容が多いのですが、特に自分の財布や貯金通帳が盗まれたと訴える「物盗られ妄想」は、8割以上と言っても過言ではありません。

妄想が主たる症状の統合失調症では、間違った考えが固定しているので、妄想の内容が常に同じなのに対して、認知症の妄想は、内容がコロコロ変わること、過去の出来事に関係した内容であること、被害妄想の対象がごく身近な人という特徴を持っています。

被害妄想を起こす5つの原因

ここまで読み進めてみて、「私の思い過ごしだったのかも」と思えた人の場合、被害妄想は病気の症状ではなく、精神的な不安定さからくるものであると言えるでしょう。しかし、病気とは言えないまでも、不安が大きくなりすぎて情報の整理がつかなくなってることもあると思います。そういう時の対処法をご紹介します。

精神的に不安定な状態にあり「被害妄想している」と感じてしまう原因には、大きく分けて

  • 人付き合いが苦手
  • 思い込みが強い
  • ネガティブ思考になりがち
  • 無意識への刷り込み
  • 幼少期の親子関係

などの5つが考えられます。  

人付き合いが苦手

子どもの頃から他人と活発にコミュニケーションを取っていた人は、自然と人間関係の築き方を心得ているでしょう。もちろんさまざまな人と接する中で、うまくいくことばかりとは限りません。社交的な人でも対人関係で苦い経験をしたことはあるでしょう。

たとえば挨拶をしても知らんぷりの人、攻撃的な人など、コミュニケーションを取るのが難しい人もいますので、嫌な経験をすることもあるでしょう。しかし、そのような経験から、苦手な人との接し方や対人ストレスの回避方法などを学んだり、円滑なコミュニケーション法を習得していったりできます。

一方、人と接するのが苦手であまり多くの人とコミュニケーションを取らずに過ごしてきた人は、対人関係の経験が不足していますので、他人とうまくコミュニケーションが取れない可能性もあります。そのため人間関係を築くことに躓くと、被害妄想を抱いてしまうことがあります。

被害妄想があると相手のことを信用できなくなりますので、人付き合いがうまくいきません。最初から相手を信用できないと、相手も心を開いてくれないでしょうから人間関係はうまくいかず、悪循環となってしまいます。

このような方は、自分の殻にこもらずに、さまざまな人とコミュニケーションを取るように努力してみてはいかがでしょうか。対人関係の経験を積むことで、信用できる人を見分けられるようになっていきます。そうすれば、これまで人と関わる中で自分が感じていたものが被害妄想だったと気づき、人間関係に対する恐れが解消できていくでしょう。

思い込みが強い

思い込みの強さは、認知の歪みを引き起こします。

例えば、誰かが「ひそひそ話をしている」シーンを見かけた時、その受け取り方が普段の意識に引っ張られます。普段から「自分のことが好きになれない」と感じている人は「あの子もきっと自分のことが嫌いなんだ」「きっと私の悪口を言っているんだろうな」と受け取ります。

かたや普段から「自分のことが大好きだ」と感じている人は、「周囲もそんな自分が好きだろう」と思えるので、誰かのひそひそ話しを見ても「もしかしてあの子、わたしに気があるのかな?」と受け取る可能性がります。

起こっていることは「ひそひそ話を見かけた」という事実1つなのに、その解釈がその人の普段の思い込みによって無限にあるのです。この普段の思い込みがネガティブな方に傾いていると、被害妄想を生み出します。

ネガティブ思考になりがち

ネガティブ思考の人は、起こった出来事を自分に悪いように解釈してしまうことがあります。このような人は、自分に自信がないことが原因になっていることがあります。

例えば、友達を食事に誘ったのに断られたとします。このとき、自分に自信がない人は「私と一緒に過ごしても面白くないのかな」「嫌われてるのかな」「ひょっとしたら私だけ仲間はずれにされているかも?」などとネガティブな方向に考えてしまう傾向にあります。

友達はそんなことを一言も言っていないのに、自分で勝手に悪い方向へと考えてしまうのです。これは自分に自信がないことが原因であり、自分は価値がない人間だとまで思ってしまう人もいます。しかし、自分に自信がある人だったらこのようなことは考えもしないでしょう。「今日は都合が悪いから無理」と言われたら、きっとその言葉を素直に受け取ります。たったこれだけの言葉で「自分は嫌われているかも?」なんて思いもしません。

そのため、ポジティブな人は断られたからといって、それほど気にすることもありません。「今日は残念だったけれどまた別の日に誘えばいいや」と思うことができます。

一方、ネガティブ思考になりがちな人は、人間関係を築くときにも「どうせ私なんて」という気持ちがあるので卑屈になってしまいがちです。断られたときも言葉通りに受け取れず、自分に問題があるのではないかと思ってしまいます。そのようなことではますます自分に自信をなくしてしまい、人と接するのも困難になってしまうでしょう。

被害妄想に陥りがちな人は、相手の話に裏があるのでは?と思いこまず、言葉通りに受け取るようにしてみましょう。何の根拠もないのに自分で勝手に思っているだけなのです。自分に自信が持てないからといって、相手に嫌われているだなんて思うのは考えすぎでしょう。相手の言葉を悪いように捉えないことで、ずいぶん気持ちも楽になります。

無意識への刷り込み

悪意のある人からの、あたかもすべての人が自分を嫌っているような刷り込みが、被害妄想につながってしまうケースです。いじめの経験による被害妄想もこれに起因します。

相手の精神的な嫌がらせに対して、こちらが反撃しようとしたり、反抗する態度を見せたりすると、嫌がらせを行っている側が被害者になりすまし、周囲を味方につけて被害者を非難するように計らいます。

こうなってしまうと被害者が加害者として責められる構図ができあがってしまい、被害者はどんどん混乱していきます。そして「本当に自分が悪かったのではないか?」「自分は嫌われて当然の人間なのかもしれない」と思い込むようになり、被害妄想になっていくケースもあります。

幼少期の親子関係

父親から必要以上の叱責を受けた、あるいは暴力を振るわれていたという経験があり、しかも母親がかばうでもなく、兄弟が助けるでもなく、家族のうちでただ一人の悪者として仕立て上げられてしまった。そんな家族トラブルを経験した過去のある人は、被害妄想を抱きやすくなります。

幼少期に、自分への不当な攻撃を無意識に抑圧させてしまっているので、無意識から滲み出て来るかのように、無関係な他人が自分に危害を加えていると錯覚してしまうことがあります。

そういう場合は、幼少期に受けた不当な攻撃を脳が再現してしまっているのですが、家族から不当な攻撃を受けていたことを認めることにこころが抵抗するので、この無意識の苦しみがあたかも他人からの攻撃によるものだと思い込んでしまうのです。

被害妄想にならないための3つの対処法

これらの原因が、精神的に不安定な状態を作りだし、被害妄想を感じるようになってしまっていることがあります。ですが症状が「病気ではない」=「確信になっていない」場合は、こころのあり方を変えたり、考え方を変えることによって対処できることがあります。

具体的には、次の3つの対処の仕方があります。

自分のせいにしない

まわりの人に「それって被害妄想でしょ」と指摘されても、「わたし被害妄想したてのかな」と心配する必要はありません。仮に私って被害妄想が強いのかなぁと感じることがあったとしても、それを「自分の心が弱いからだ」と責める必要はありません。

そういう時は「疲れているから」と体調不良のせいにしてしまうのが良いでしょう。

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みんなが私の悪口を言っていると思ってしまう。

どうやら私は疲れているせいで、みんなが悪口を言っていると感じているみたいだ。
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そう思ってしまう自分を受け入れる

被害妄想的な感情は「なくそう」とすると、意識がそこに集中してしまって、余計に被害者意識が酷くなる可能性もあります。時には、「そういうこともあるよね」と開き直ってみるのも手です。不安に意識を向けるのではなく、幸せに意識を向けると違った見方ができるようになります。

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彼が浮気しているんじゃないかと、つい不安になる。本当は浮気なんてしていないのに。どうしてだろう?

浮気を疑ってしまうことくらい誰にでもあることよね。むしろ浮気を疑える相手がいること自体、相手がいない人にとっては贅沢な悩みよね。私ってそういう意味では恵まれてる?
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好きなことをする時間を増やす

症状や気分にまかせて、なんでわかってくれないんだ!と他の人を責めたり、自分はなんでこんなに被害妄想が強いのだろうと自分を責めたりすると、人間関係が悪くなってしまいます。

そういう時は、一旦そのことは忘れて、自分が楽しくなることに時間を注ぎ込みましょう。

好きな映画をみる、ゲームをする、YouTubeを見るでもいいし、料理に没頭する、ひたすら泳ぐなどからだを動かしてもいいでしょう。

好きなことをすると、こころにエネルギーが充電されます。自分の趣味を取る時間などがない人は、思い切って休みをとってこころをリフレッシュすることが大事です。

病気の症状として被害妄想の対処法

ここからは、すでに病気の症状としての被害妄想が出ている人、つまり「考え方を変えよう」という発想が通じない人について解説します。当然ですが、病気である場合は精神科を受診し、専門家のアドバイスに従ってください。

この記事では、病気の症状として起きている被害妄想についての理解を深めることを目的としています。

多くの場合は精神疾患が原因

記事の前半でも触れましたが、被害妄想を生むのはこころの病気が原因です。精神疾患は非常に多くの種類があり、いろいろな病気で被害妄想の症状が見られるので、被害妄想の症状から見ただけでは、病名を特定するのが非常に困難です。

被害妄想への対処法をしっかり理解するためにも、まずはこころの病について理解を深めましょう。
こころの病は、目に見えない病気ですので理解が難しい面もありますが、ストレスの多い現代社会においては多くの方がこころの病を抱えておられます。まだまだ分かっていないことも多い疾患ですが、医学の進歩によって、人の脳の機能が次第に解明されるにつれ、いくつかのここの病のメカニズムが少しずつ明らかになってきました。

こころの病は決して特別な人だけが罹る病気ではなく、私たちは誰でもなる可能性がある身近な病気です。また病気の症状だけでなく、そこから派生して生活上の困難さを生じることがしばしばありますので、こころの病の回復には、医療だけでなく周囲の理解や支援がとても重要になるのです。
出典: pmc.opho.jp

セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン

多くの精神疾患に共通して言えることは、神経伝達物質の分泌に異常が見られるということです。脳では神経細胞同士の情報伝達によって、こころの機能やからだの機能をつかさどる細胞に命令を行います。

この神経細胞同士の情報伝達に不可欠なのが神経伝達物質です。送られてる情報に応じて、その種類などを調整していますが、こころの病気と特に関係が深いのが、セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンです。

セロトニンはいわば「落ち着かせる」ホルモンであり、ドーパミンは「やる気・快楽を与える」ホルモン、ノルアドレナリンには「不安や恐怖を感じる」ホルモンです。ノルアドレナリンが「やばい!どうしよう?」と危機を察知させ、ドーパミンは「やるぞ!」と行動する意欲をかき立て、セロトニンは逆に「まぁまぁ、ちょっと落ち着いて」と冷静になるようにしてくれます。

私たちのこころはこの3つのバランスで成り立っているのです。(細かくは60種類くらいの神経伝達物質があります。)このバランスが極端に崩れたときに精神疾患を引き起こし、それが被害妄想を生み出すと考えられているのです。
  
ノルアドレナリンの分泌が不足すると、物事への関心が薄れたり、意欲や気力が低下します。逆に分泌過剰になると、怒りっぽく、イライラしてキレやすくなります。

ドーパミンの分泌が不足すると、運動機能や学習機能、性機能などが低下します。逆に分泌過剰になると、統合失調症やアルコール依存症・拒食症などの依存症を引き起こします。

セロトニンの分泌が不足すると、ぼーっとしたり、うつっぽくなったり、パニックを起こします。普段、分泌過剰にはなりにくいですすが、投薬などによって過剰になると精神不安定になります。
  

以上のことから、被害妄想は、「ストレスに対して極端に弱く、敏感になっている」状態と言えるので、セロトニンの分泌が不足している、またはドーパミンやノルアドレナリンの分泌が過剰になっていると言えます。

投薬による治療と食事による改善

繰り返しになりますが、病気の場合は、まず精神科で受診することが必須になるでしょう。その際、こう向精神薬としてドーパミンの分泌を抑える薬が出されたり、セロトニンが増えるようにする薬が処方されます。ただし、薬による治療は「被害妄想の症状を出さなくさせる」ことは可能ですが、そもそものホルモンバランスが崩れていますので、根本的な解決にはなりません。
  
根本的に神経伝達物質のバランスを整えるには、投薬と同時に普段の食事を変えることが重要になってきます。(この際、被毒妄想などがあるとそもそも食事を食べてもらえないこともあるので、薬で症状を抑えることも必要になってきます)
  
被害妄想を根本から改善させるために、普段の食事ですべきことは二つです。ドーパミンやノルアドレナリンが増える食事を控えるか、セロトニンの増えるような食事をすることです。

肉を食えば憎らしく。豆を食えばマメになる

これは病気でない場合の人にとっても有効な、食事の摂り方の一つの指針になります。

ノルアドレナリンは、攻撃ホルモンと呼ばれていて、危機から自分の身を守るために備わってる防衛本能と言えます。イメージは肉食動物です。肉食動物が食べるもの、それはつまり他の動物のお肉です。「牛・豚・鳥・魚」などのお肉にはノルアドレナリンの材料になる、フェニルアラニンというアミノ酸が多く含まれています。

これはドーパミンの材料にもなりますので、お肉を食べる量が多ければ多いほど、ドーパミンやノルアドレナリンが出るので、攻撃的になりやすく「嫌われているかもしれない」という感情や「必要以上に責められている」といった発想の原因になります。
  
他にも、ドーパミンやノルアドレナリンを増やす食事として挙げられるのが、意外にも市販の清涼飲料水やスイーツです。多くの清涼飲料やスイーツに人工甘味料として含まれているアスパルテームや、パルスイートにはL-フェニルアラニン化合物という、フェニルアラニンの元になる物質が含まれます。

これはセロトニンの合成を阻害するという報告もありますので、摂りすぎには気をつけたいところです。
    
  
そして、もう一つの選択肢がセロトニンが増えるような食事をすることです。

その代表格が豆です。大豆に多く含まれるトリプトファンはセロトニンの材料となります。イメージは草食動物です。草食動物が好みそうな大豆どの豆類、アーモンドやナッツなどの種子類に多く含まれています。

もちろん動物のお肉の中にもトリプトファンは含まれているのですが、セロトニンの合成にはビタミンやミネラルも必要になってきます。ですので、豆類や種子類と一緒に、野菜や果物を食べる量を増やすとセロトニンの合成が促されます。
  
セロトニンが増えれば被害妄想のもととなる、ドーパミンやノルアドレナリンの働きを抑制することができます。またセロトニンはポジティブシンキングを促しますので、被害妄想を生む原因となるネガティブシンキングに打ち勝つ対抗策としても非常に有効な手段と言えるでしょう。

被害妄想の強い人と接する時の3つのコツ

この記事を読んでいる人の中には、自分が被害妄想はないけど、家族や友人の被害妄想に悩まれている人もいるでしょう。それ自体がストレスになっている人もいると思います。

ですが特に病気になっている場合は、こちらが被害妄想を治してあげることはできないと思って接した方が良いでしょう。

妄想は、こちらにとっては非現実的でも、相手にとっては現実です。あなたもいきなり、いま見ている現実が実は自分のこころが作り出した虚構なんだから目を覚ましなよ、と言われても受け入れられないですよね。

被害妄想を抱いている人にとっては、「感じていることが事実であるという確信がある」という前提に立ったコミュニケーションをとると、だいぶ気が楽になります。

否定せず、認める

まわりの人にとっては「何言ってんの。そんなわけないじゃない」と思える内容でも、ご本人にとっては「確信」していることです。それを否定すると、余計にその確信を深めてしまうので逆効果です。

被害妄想を抱いている人の訴えが事実かどうかではなく、被害妄想という「症状」によってイヤな思いをしたという事実を認めてあげましょう。そして「怖かったよね。ここは大丈夫だよ」など安心できるような声かけをしてあげてください。

「あなたに何がわかるの!」と返されても怒ってはいけません。ひたすら寄り添ってあげましょう。

同意せず、かわす

否定しないからといって、被害妄想の内容に同意してはいけません。同意してしまうと、その被害妄想の確信がさらに深まります。

「◯◯さんが私の悪口を言ってるの。あなたはどう思う?」と聞かれたら、「イヤな思いをしてつらかったんだね」などと言って、同意せずかわしましょう。

被害妄想の人との関わり方は、否定せず、同意せず、がポイントです。

詳しく聞かず、話題を切り替える

本人が話したいときは、否定も肯定もせず聞けばよいですが、カウンセラーのように詳しく聞く必要はありません。

「どうしてそう思ったの?」や「いつから感じてるの?」など詳しいことを聞こうとすると、余計に非現実的なストーリーを組み立てることになりかねません。

「大変だったね。一度先生に相談してみよう」
「怖かったんだね。ところで、今日すごい面白いことがあったんだよ」
「辛かったね。今度温泉にでも行こうか」

など上手に話題を切り替えてあげてください。

まとめ

被害妄想には2種類ある

被害妄想には「病気の症状である場合」と「精神的な不安定さから来る思い込み」の2種類があります。

周囲の説得にもかかわらず、本人の確信が揺るがない場合は、病気である可能性が高く、周囲からの説得や考え方の変化で軌道修正できそうな場合は、病気ではありません。

「私って被害妄想が強いのかなぁ」と感じている時点で、病気ではありませんので、自分のこころの持ちようや考え方を変えることで、被害妄想を感じにくくすることが可能です。

病気ではない場合の対処法

・自分のせいにしないで「疲れているから」と「体調不良のせい」にしてしまおう。

・被害妄想的な感情を「なくそう」とするのではなく、「そういうこともあるよね」と開き直ってしまおう。

・好きなことに没頭して、こころをリフレッシュする時間を作ろう。

病気の症状である場合の対処法

・セロトニンとドーパミンとノルアドレナリンのバランスを整えよう。

・投薬治療と並行して、食事の改善によってバランスを整えよう。

・セロトニンにを増やすためには豆を食べ、ドーパミンとノルアドレナリンを抑えるために肉を控えよう。

被害妄想の強い人と接し方

・本人の感じた「現実」を否定するのではなく、そう感じた、ということを認めてあげよう。

・被害妄想に同意しないように注意しよう。同意を求めたらうまくかわそう。

・話を行くときは具体的に掘り下げないようにして、話題を切り替えよう。

最後に

いかがでしたでしょうか?被害妄想という言葉自体はよく使われますが、その正体は意外とよく知られていないものです。

まずは、被害妄想というものがどういうものなのかを理解し、それは誰しもがなりうる状態であるということを認識することが大事です。

この記事を読んで「そこまで重症じゃないことがわかって安心した」、「被害妄想の強い友人や家族の対応の仕方がわかった」など、少しでも被害妄想についての認識が広まれば嬉しいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。