アルハラかもしれない?今日から出来る加害者や被害者にならない為の予防策

他人に対する嫌がらせである「ハラスメント」。女性に嫌がらせをする「セクハラ」や権力や地位を利用した「パワハラ」はすでに社会的に認知されています。それに続いて新たな法律問題として「アルコールハラスメント」通称「アルハラ」が浮上してきています。

アルハラの定義

アルハラとは

アルハラとは「アルコールハラスメント」の略です。セクハラやパワハラと同じようにお酒に関する人権侵害ですが、命を奪うこともある恐ろしい人間関係といえそうです。アルハラの定義としては

飲酒の強要

上下関係・部の伝統・集団によるはやしたてや罰ゲームなどといった形で心理的な圧力をかけ、飲まざるをえない状況に追い込むことです。飲める、飲めないに関係なく、飲ませる状況に追い込んでしまいます。断れない性格の人はもちろんのこと、会社でのこれからのお付き合い、取引先との関係などを考えると、断りきれないケースが多くなります。

イッキ飲ませ

場を盛り上げるために、イッキ飲みや早飲み競争などをさせること。「イッキ飲み」とは一息で飲み干すこと、早飲みも「イッキ」と同じです。お酒の席では勢いが大事とされている風潮が強く、まわりもそれに乗せられてしまいます。そんななか誰かが「イッキ!イッキ!」と言い始めれば、その場の雰囲気を壊したくないという心理が働いて、無理にお酒を飲まざるを得なくなってしまいます。

意図的な酔いつぶし

酔いつぶすことを意図して、飲み会を行なうことで、傷害行為にもあたります。ひどいケースでは吐くための袋やバケツ、「つぶれ部屋」を用意していることもあります。これは集団で言い寄って、いじめの対象としてアルコールを飲ませるパターンです。自分たちはあまり飲まず、ターゲットにした一人だけにとにかくお酒を飲ませ、酔ってフラフラになった被害者を笑って満足感を得ます。

飲めない人への配慮を欠くこと

本人の体質や意向を無視して飲酒をすすめる、宴会に酒類以外の飲み物を用意しない、飲めないことをからかったり侮辱する、などをする行為です。

酔ったうえでの迷惑行為

酔って相手にからんだり、部下に家まで送らせたり、さらには女性の体にさわるなど、アルハラ、セクハラ、パワハラ、すべてを凝縮したような迷惑行為を行う人です。こういう人は昔から「酒癖が悪い」と言われてきましたが、それではすまされない時代がやってきました。

自分でも、あるいは家族からも「酒癖が悪い」と言われている人は、これからはアルハラとして告発されるかもしれません。

あなたもアルハラ加害者に?アルハラセルフチェック

アルコールに弱い人のことも考えずに、お酒を強要してしまうアルハラ。そんなアルコールにたまたま強い人が犯してしまうアルハラには特徴があります。自分自身に当てはめ、まわりに迷惑をかけていないか反省してみましょう。

  1. 練習すればアルコールは強くなれると思う。
  2. 吐く人のための袋やバケツ、つぶれ部屋を用意するのが当たり前。
  3. 先輩や上司から注がれたら、断れないと思う。
  4. みんなで酔っぱらうことで仲間との一体感が生まれると思う。
  5. 飲み会はちょっとくらい羽目を外さないと楽しくないと思う。
  6. ソフトドリンクを飲むなんて、まわりの空気を読めていないと思う
  7. 酔っているから、多少の暴力や暴言は仕方ないと思う。
  8. 女性ならお酌をするのが当然だ。
  9. 未成年でも、少しぐらいならお酒を飲ませても大丈夫だと思う。
  10. イッキコールを3つ以上知っている。
  11. 体質的に飲めない人なんて、いないと思う。
  12. 男だったら飲めないとかっこわるい。

ひとつでもあてはまったら、あなたは気づかないうちにアルハラしている可能性があります。

飲み会を主宰する人にはアルハラ対策する責任も

アルハラを防ぐためには、飲み会を主宰する人には、アルハラを予測した対策をする責任もあります。飲み会が盛り上がったというだけでの評価は、すでに過去のもの。飲酒に関する嫌がらせ、人権障害、さらにはセクハラ、パワハラが同時に起こることを予測しながらのマネージメントをきちんとしなければ評価も落ちてしまう時代です。その責任としては

アルハラをなくすこと

飲酒にまつわる嫌がらせ、人権侵害をしない。飲めない人への配慮として、ノンアルコール飲料を用意することを忘れないようにしましょう。

吐く人を出さないこと

「吐けば大丈夫」という考え方は非常に危険であると認識する。限界以上に飲ませないよう心がけること。まわりで飲み過ぎている人をチェックして声をかけるようにしましょう。

酔いつぶれた人が出たら、介抱し、保護すること。

決して放ったらかしにしてはいけません。盛り上がっているところを邪魔する気持ちも働きますが、救急医療に連絡するなどの対処をとることが大切です。

未成年者に飲酒させないこと。

法律で禁止されている20歳未満は身体が未発達なため、飲酒による影響が大きいということを忘れないこと。18歳で仕事をしている人もいます。なんとなく仕事をしていると未成年ということを忘れてしまうこともあるので注意しましょう。

車を運転する予定の人に飲酒させないこと。

飲酒した人はもちろん、勧めた人も法的に罰せられます。飲酒運転が惨劇を生み出すことを理解することが大切です。

ちょっとの距離だから、この時間は警察も取り締まりしていないから、そんな言葉で車を運転する予定の人に飲酒させてしまうこともアルハラです。

急性アルコール中毒とは

日本人はアルコールに弱い

お酒に強いか、弱いかは体質によって決まっています。アルコールが体内に入ると、アセトアルデヒドに分解されます。この物質は毒性が強く、顔が赤くなったり、吐き気がしたり、頭痛、脈拍が早くなるなどの症状があらわれます。

この毒性の強いアセトアルデヒドを分解するのが、アルデヒド脱水素酵素「ALDH2」です。ところが日本人の場合、約40%の人がこの酵素の働きが低いためお酒に弱く、さらに4%の人がまったくこの酵素を持ち合わせていないため、お酒が飲めない人、お酒を飲んでは危険な人といわれています。

急性アルコール中毒での死亡ケース

急性アルコール中毒は血中のアルコール濃度が高まることによって、呼吸や循環中枢が抑制されて死亡してしまうケースと、吐しゃ物がのどに詰まって死亡するケースがあります。

また酔っぱらって足もとがふらついたことによる転倒、あるいは駅からホームに落ちてしまうような事故、川や海でおぼれてしまったあり、ケンカによる死亡事故も多発しています。

なかでも若い人は自分がどのくらい飲めるのか、その限界を知らないことやアルコールに対しての耐性が低いことなどから、急性アルコール中毒になるリスクが高くなります。これは大学や社会人になってからの新人歓迎行事として「イッキ飲み」という悪慣習がまだ残っているためです。

実際は、アルコール中毒による救急搬送は徐々に少なくなってきています。それでも毎年1万人前後の人が救急搬送され、20代の若者が半数以上を占めています。

急性アルコール中毒の人がいたら

周囲に急性アルコール中毒が疑われる人、たとえば顔が真っ青だったり、酔いつぶれて苦しそうだったり、様子がおかしいなと思う人がいたら次のことに気をつけましょう。

  1. 絶対に一人にしない。
  2. ベルトなど衣類をゆるめて、楽にさせる
  3. 体温の低下を防ぐため、毛布などを掛けて温かくする
  4. 吐しゃ物による窒息を防ぐため、体を横に寝かせる
  5. 吐きそうになったら、抱き起こさないで、横向きのままで吐かせる

また呼びかけてもゆすっても反応しない、体が冷たくなってきている、口から泡をはいている、呼吸状態が不安定といった以上があらわれている場合は、迷わず救急車を呼びましょう。

アルハラの法律的問題とは

アルハラは罪に問われるのか

これまでは、アルハラが違法行為として法律上裁かれるということはほとんどありませんでした。アルハラによって急性アルコール中毒になり死亡したという裁判ですら「飲酒したのは被害者の自主的判断だ」としてアルハラの違法性を認められることはありませんでした。

しかし2008年の神戸学院大学の男子学生が「部の伝統だ」として合宿中に飲酒を強要し、急性アルコール中毒で昏睡状態になっていたのにもかかわらず、放置して死亡させたという事件が発生しました。

この裁判で神戸地裁は「心理的に飲まざるを得ない圧力をかけた飲酒の強要であり、アルコールハラスメントにあたる」と初めて法律的に認める判断を示しました。この画期的な判断により、アルハラによる飲酒強要などが、刑事・民事責任を問われる可能性が高くなりました。

アルハラはどんな法律に違反するのか

アルハラによって、刑事罰や損害賠償請求をすることができるようになりました。具体的には無理やり相手にお酒を飲ませた場合は「強要罪」で3年以下の懲役になります。無理やりお酒を飲ませて急性アルコール中毒にさせた場合は「傷害罪」で15年以下の懲役、または50万円以下の罰金になります。その上死亡させたとなると「傷害致死罪」として3年以上の有期懲役の可能性が出てきます。

さらに自分では直接関与していなくても他の人の障害行為をあおる「イッキ!イッキ!」とイッキコールをした場合は「障害現場助勢罪」で1年以下の懲役、または10万円以下の罰金もしくは科料に問われる可能性があります。

お酒を強要するだけでなく酔っぱらって公然と相手を侮辱すると「侮辱罪」になりますし、泥酔者を放置すれば「保護責任者遺棄罪」に。さらに必要な保護をせずに放置して死亡させた場合は「遺棄等致死罪」といった罪になる可能性が高くなります。

アルハラで加害者、被害者にならないための予防策

自分はお酒に弱いのか強いのかを知っておく

お酒が好きか嫌いかは別として、自分はお酒に弱いのか強いのかを知っておくことは大切です。新社会人など、就業先や職種でお酒を飲む機会が多くなりそうな場合、一度アルコールパッチテストを行ってみることをお勧めします。

アルコールパッチテストとは、自分自身のアルコールに対する耐性を見るテストです。自分の体質を知ることによって、自分に合ったお酒の飲み方やセーブの仕方を覚えることができます。

テストは自宅で簡単にできます。アルコールパッチテストのキットは、ドラッグストアやアマゾンなどで3枚1000円以内くらいで売られています。

アルコールパッチテストの方法

  1. パッチテープ(薬剤のついてないガーゼ付きの絆創膏)に、市販の消毒用アルコールを、2~3滴しみこませます。
  2. を上腕の内側に貼ります。
  3. 7分後にはがし、はがした直後(5秒以内)に、ガーゼが当たっていた部分の肌の色を見ます。
  4. はがしてから、さらに10分後に、もう一度肌の色を見ます。

アルコールパッチテストの判定

肌の色に変化なしの場合はALDH2活性型(白型タイプ)です。

ガーゼをはがした部分が赤く変化しない人は、ALDH2酵素が、正常に働いているので、体内でアルコールを分解する力が強いタイプです。

アルコールに強いため飲酒が原因の生活習慣病になりやすく、度を過ぎるとアルコール依存症になる危険性も持ち合わせています。

肌が十分後に赤くなる場合はALDH2低活性型(赤型タイプ)です。

ガーゼをはがした部分が赤く変化した人は、ALDH2酵素の働きが悪いので体内でアルコールを分解する力が弱いタイプです。

飲酒すると頭痛や吐き気を引き起こします。体質なので、訓練で強くなることはありません。飲酒を上手に断るか、無理してお酒は飲まないようにしましょう。

肌がはがした直後に赤くなる場合はALDH2不活性型です。

このタイプの人はお酒が飲めません。アルコールは体に毒と考えて、勧められても断るようにしましょう。

アルハラお断りアプリを使う

スマホ用のアプリです。iPhone用途アンドロイド用の両方が用意されています。このアプリは一気飲みが原因で死亡した学生の遺族らが立ちあげた「イッキ飲み防止連絡協議会」が作成したものです。
アプリの内容は4匹の動物たちが、かわりにお酒を断ってくれます。

ネコは「イッキ飲みなんか、するわけニャー!味わって飲みます。」
イヌは「もう限界だワン!これより先は遠慮しときます」

カラスは「わたしはカーなので飲めないんです!あしカラズ」

ヤギは「体質的に飲メエ~ません!無理ヤギ飲ませないで」

その場の雰囲気を白けさせずに、ちょっとユーモアを交えたお断りです。

まとめ

飲み会を、明日への英気を養い、コミュニケーションの場、参加者の懇親を深める場とするのか、遺恨を残す場にするのか。それはすべてお酒の飲み方、周囲への気配りによります。アルハラとは何なのか、アルハラを防ぐためにはどうすればいいのか、特にお酒が強い人にはお酒が弱い人の立場に立って考えてもらいたいものです。

アルハラは「セクハラ」「パワハラ」の要素も強く悪質なものです。ひと昔前のように「あれは酒の席だったから、無礼講だよ」などと言う言い訳は通用しない時代となっていることをしっかり認識しましょう。